レガシーの基幹業務システムを運用されている企業は「2025年の崖」を機に、基幹業務システムの刷新やDXの取り組みを行う動きが増えています。
プロジェクトを推進する上では経営層や事業側、利用現場との合意形成などで苦労することがあるかと思います。
筆者が今まで経験してきたことを振返り、どうすれば円滑なプロジェクト推進が図れるかについて、基幹業務システム構築プロジェクトを例に考えてみます。
情報システム部門の悩み
IT関連プロジェクトは、情報システム部門が主体で運営していくことが多いと思います。情報システム部門の主任務はシステム構築でありますが、会社の目的としては業務プロセスを再構築して様々な課題解決と生産性向上を図ることです。
特に、ERPを導入する場合は、ERPが提供する標準機能で如何にして業務プロセスを再構築していくか、ということが最大の焦点となります。
そこで情報システム部門として重要なファクターはとしては下記の2つです。
- 経営層・事業側幹部と合意しトップダウンで進められるか?
- 利用現場との理解形成、協力を得られるか?
このことが十分に対応できていないと以下の現象が生じることに繋がります。
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基幹業務システム構築プロジェクトで利用現場部門から協力が得られない
- 現状システム機能再現の仕様要求が多く標準機能でのプロセス構築が進まない
- 組織間の業務機能見直しでトレードオフが発生し調整が進まない
- それらにより構築関連コストや期間が予定より増えてしまう
- 導入時、利用現場の業務運用が想定通り行えず、費用対効果が出ない
ITプロジェクトが上手く進まない原因?
今までの経験からの振り返りとしては、下記内容が原因として推察されます。
- 業務マターの改革・変革や調整は現場・事業側の問題としておいてしまう
- 経営に対してIT目線や定性視点での提案・説明となり、経営課題との繋がりや事業へのリターンが明確に伝えきれない
- プロジェクト推進や業務関連の知識・知見が不足している
これらにより、経営との合意・理解形成が不十分だと新業務プロセス構築も現場任せになってしまいます。
プロジェクトを成功させるには
経営に対して、投資目的(何故・何の為)とリターンについて明らかにし、経営課題解決の一環として捉えてもらう必要があります。
その為には情報システム部門自ら事業貢献するIT提供という観点で意識変革の取り組みが必要であり、システム機能ではなく業務運用の観点で企画して、経営や事業側幹部、利用部門との距離感を縮め会社一体化の動き作ることが重要です。
また、業務プロセスの再構築が伴うので、経営計画とのリンクも必須です。組織間の業務機能のトレードオフや組織機能の見直しも必要な場合もあり、経営参画による判断と対処が必須です。
成功に向けての事項をまとめると次の通りとなります。
基本計画について経営との合意
- 業務視点で目的(何故、何の為)を経営と合意し現場部門に落とし込む
利用部門からのProjectメンバーの選出と参画
- 業務プロセスの再構築に繋がるためそれに適した人材を選出
- メンバーと変革ミッションを共有化して、意識変革を実施
構築依頼するITソリューションベンダーの選定
- あるべき業務像、希望コスト・稼働時期をRFPにまとめ、実現できる提案を選択
- プロジェクト推進や業務知見を持ち成功に向けて支援可能なパートナーを選択
各種の知見不足対策
- 社内で賄えないケースは、専門コンサルタント・アドバイザー、ソリューションベンダーにより補足していくことが必要
進捗管理
- 「いつできる」「どうしたらできる」の2つの観点で実施
- マイルストーンを置いて、必要に応じて計画を見直し、全体日程の遵守を図る
不確実、想定外事項の対処
- 想定外や不確実性、顕在化できない事象がありえるため、進捗確認において早期発見し、慌てず早期対処に注力していくことが重要
世の中の経済事情・ビジネスの変化対応
- プロジェクト期間は2年近いことが多く、その間に社内外の経済事情変化が発生しプロジェクトに影響する可能性がある。感度よく早期にキャッチして適時的確な対処が必要
最後に
商売に例えると情報システム部門にとって「真の顧客」は経営であり利用者であるため、IT部隊の目線ではなく、相手目線で企画し提案を行う必要があります。
成功に向けて、ITツール、ソリューションベンダーの選定は重要事項であり次回はどのような選定を実施するべきかをお話ししたいと思います。