1.SCM における PDCA プロセス
前回のコラムで、未来の需要を100% 見極めることは不可能であると述べました。このことに関しては、未来予知能力を持つ超能力者でない限り異論は無いと思います。では、完全には予測できない、しかも常に変動する需要を捉えるにはどうすれば良いのでしょうか。勿論、将来の需要の予測精度を高める取り組みは非常に重要ですし、そのような取り組みなしでは生産や調達、出荷などの計画の精度を向上させることはできません。一方で未来の需要変動が正確には捉えられないのであれば、その変動に対して素早く対応して追随する、という方法が考えられます。
つまり、下図のような「計画 (Plan)」-「実行 (Do)」-「確認 (Check)」-「修正 (Adjust)」のループを高い頻度で回す、という考え方になります。この際、各プロセスでは次のような機能が必要になります。
このような PDCA ループは従来の SCM 改革の取り組みでも非常に重要な実現目標の一つでしたが、「売上(予算達成)」も目的とする次なる SCM 改革においては、前回のコラムでも述べた「量」による指標管理のみではなく、常に「量」と「金額」が相互変換された計画による PDCA ループの仕組みの実現が最も重要になります。
そもそも本来の SCM とは戦略的な経営管理手法であり、経営においては常にその重要な評価指標は量ではなく金額で管理されます。つまり、経営と唯一の予算達成ミッションを持つ営業部門における言語は「金額」であり、また生産や調達、物流などの実務部門の言語は「量」なのです。そのため、従来の SCM の取り組みにおいてはこれら2つの異なる言語の違いにより、企業としての一貫した PDCA の実現ができていなかったとも言えます。そのために、下図のように企業として1つの一貫した PDCA ループになり得ませんでした。
2.S&OPとは
企業として一貫した1つの PDCA ループを実現し、新たなる課題を解決するための取り組みとして、S&OP (Sales & Operations Planning) という手法に注目が集まっています。これはその名前の通り、「金額」という言語を使用するSales (経営と営業部門)と 「量」という言語を使用する Operations (生産、調達、物流などの実務部門)を統合した計画の仕組みを意味します。S&OP の位置付けとしては、下図のように経営側と実務側を繋ぐための仕組みとなります。
そしてこの S&OP の仕組みにより、前述の ループになっていなかった PDCA を、下図のように一つのループとして作り上げるものです。
次回は、S&OP の実現に向けた具体的な施策を紹介します。