コラム

受注生産型コラム

【第3回】
潜在意識の壁②

前回は意識改革の1つ目として、属人的業務について取り上げました。
今回は意識改革の2つ目として、

情報の共有化も蓄積も、さらに活かせる仕組みもない

これを考えてみたいと思います。

メーカで何故この課題を抱えておられるかというヒアリングを進めて行くと、「部分、部門単位での最適化で効果があったから」という潜在記憶のようなものにたどり着きます。

確かにシステムの部分・部門最適というのは、比較的安価な予算で実施出来て、また一時的には 効果が見えやすく、ターゲットとしたユーザからも喜ばれます。そして、次々とそれを繰り返し、何年か経てばスパゲッティーとかパッチワークと揶揄される、ツギハギのシステムになってしまう。

その挙句、様々な部署で2重入力が発生し、またシステム間データ連携も煩雑になり、メーカのシステムとしてはあってはならない、製品リードタイムへの影響にまで及んでしまいます
そして、また前回のテーマでもあった、大きく以下の2つの属人化も生み出すことになります。

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システムの保守の属人化

システムを保守されていた団塊世代の方が退職される2007年問題の時も、お客様からよくこの悩みをお聞きしました。
また、このようなシステムでは、ドキュメント類が最新化されていないケースが多く、 私も某メーカの保守を担当していた若い頃に、前担当者から引き継いだプログラムのたった2行の修正の影響範囲が分からず、その試験に約3ヶ月も要した記憶があります。
これはシステムの保守担当の属人化ということになるのでしょう。

業務の属人化

属人化ということでは、業務も然りで、誰かにしか分からない機能や業務が生まれ、時間が経てば誰にもわからない機能や業務を存在させることになります。このようなメーカで、現行システムの機能や業務内容をヒアリングした時によく出てくるのが、「これは○○さんにしか分からない」というフレーズです。
製品リードタイムへの影響と属人化。これはメーカにとっては大きなリスクです。

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ただ、ツギハギのシステムになっていることを、決して非難している訳ではありません。
企業というものは各部門に効率化を求めます。各部門の方は目の前の仕事を如何に効率化するかということを、個々で考え、個々で実行した結果、全社的に見て非効率になってしまったと考えるからです。ほとんどのメーカが一度は通る道だと思います。

ここでお伝えしたいことは、全社的に考えれば、部分最適より、全体最適の方が良いのは分かってはいるのですが、全体最適化で全ての部門の効率が良くなるわけではないということを覚悟しなければならないということで、特に上流部門、工場で言えば、設計部門の手間は増えるかもしれないということです。設計部門の役割ついては、また別の機会に触れたいと思います。
ERPなどでの全体最適を考える時には、自部門の課題や利益よりも、全社としての課題や利益を優先して議論しなければならないということが肝要になってきます。

もしツギハギのシステムになっているのであれば、各部門のエースでプロジェクトを発足させ、 しっかりとした目的と全社視点を持って全体最適を検討してみてはいかがでしょうか。

次号は「3. 計画がない、またあっても、信憑性がない」について、事例を交えてお伝えしていきます。