前回は生産活動原価と生産資源購買原価のマトリクス原価表が生産改善性向上と利益創造に役立つ理由
について記述しました。>前回のコラム
今回は原価管理にMES やIoT を使う期待効果と課題について考察します。
マトリクス原価表を本格的に活用するには、生産加工工程の活動時間を人的負荷をかけずに精度よくMES やIoT で活動情報を効率的に収集することが求められます。今後の生産プロセスや原価計算プロセスにIoT 等が 普及すると、どのような生産性革新と収益性向上が期待できるかを以下に要約してみました。
1.IoT でより高精度の製品原価を測定/可視化できる
活動単位で製品加工実績が高精度な時間尺度で収集できるので従来人手での測定や収集が不可能であった原価実績の把握が可能になります。
2.IoT で標準原価情報の導出が可能になる
IoT で高精度な実際原価情報から高度な処理で標準原価情報の導出が可能になります。
生産計画レベルでは異常値を除去した標準原価で生産計画を立てることが、適確な意思決定に必要とされます。
標準原価測定の有効化の為にもIoT で精度の高い実際原価を測り、正常原価を算出するためにも生産環境情報から異常な原価を抽出することが求められます。
3.製品原価の信頼性を高めることができる
IoT による間接生産活動の収集が可能になり、大雑把な配賦計算をやめて製品原価の信頼性を高めることができます。
4.増益を可能にする
IoT による工場やラインの精度の高い非稼働時間等の可視化と収集により遊休能力の測定精度を高め、遊休能力を収益活動に転嫁する計画立案を可能にし増益を可能にします。
図表5参照
5.ロスの兆候把握と未然防止能力が高まる
IoT によるロス原価の把握と背景となる生産環境情報の収集で、ロス原因の把握能力が高まり、ロスの兆候把握と未然防止能力が高まります。
6.増収増益を図ることができる
IoT による工程占有待ち、制約による滞留発生ロス、滞留在庫高が高精度で可視化でき、機会損失を可視化して増収増益を図ることができます。
IoT による活動基準によって原価可視化で原価企画が有効化し、製品開発能力と開発速度が高まり増収が可能になります。
7.連結原価可視化の糸口が掴める
IoT と工場間ネットワークによる多拠点連結原価情報収集で、従来困難であった連結原価可視化の糸口が掴めるようになってきます。
読者の皆様が、本稿を参考に、これからの4次産業革命活用機会をとらえた儲かる製造業を目指して新たな原価管理を目指していただければ幸いです。