前回の「設計情報の可視化のすすめ方」をもとに、さらに設計力を強化する応用のしかたを紹介していきます。
1.顧客要求条件から製品仕様設計へつなぐ
設計の前提条件は商品企画や個別受注における顧客要望機能・条件(要件)です。(下図左の領域)
ここが適切に設定できないと、いくら設計が頑張っても売れる商品にはなりません。市場に立脚した情報を管理し、売れる商品の要件を詰めることが可視化の最初の作業です。良い製品設計のためには、顧客要望機能・条件とその根拠を残しておくことです。これをもとにマーケティング検証を行い、継続的に強い商品に育成していくべきです。また受注設計型製造業の営業部隊は、このシートを持ち左側の顧客要望を確認していくとよいでしょう。この要件の体系化とバリエーションのコントロールをしていくと量産効果につながるようになります。
2.コストの限界追求へつなぐ
製品品質を維持し、限界コストの追求を行うには、設計情報に立脚した検討が欠かせません。設計情報の可視化は、設計のプロセスにそって、機能・条件・方式・限界値・生産性・購買性と検討してきました。実はその各検討視点ごとにコストを決めてきたとも言えます。つまり機能に過剰、不要はないか、条件が過剰になっていないか・・・・と世界一のコストから逸脱してしまったものを見つけるのです。それを機会損失とよび、それぞれの視点毎のコスト低減の可能性を検討していくことが、世界一のコストを実現することにつながります。設計しながら限界コストの追求を行うしくみを整備すべきでしょう。(上図下段のコスト追求視点からの限界値の追求)。
3.E-BOMへつなぎ設計情報を管理する
図面は、主として部材の手配や加工・組立・検査・試験といった下流の作業のための情報が盛り込まれます。しかし設計の履歴情報などは盛込められていません。そこで設計単位、設計手順を配慮したE-BOM構成に基づいて設計情報を整備することで、E-BOMを中心にした設計情報管理、設計情報活用が容易になります。 設計情報の可視化は設計単位毎に、検討手順毎に整理してきました。従ってその形でE-BOMに展開し設計情報として管理すればよいのです。このE-BOM情報を使えば、必要に応じて引き出し、修正することも可能になります。
4.設計管理や人材育成へ活用する
設計の可視化情報を活用して、都度の顧客要望に応じてどこを見直し又は流用するかは設計管理者が決めるべきです。そしてそれに最適な設計担当者の任命、活動期間等を設定すれば、精度の高い設計管理につなぐことが出来ます。設計情報の可視化をしながら設計させることで、内容や進捗の確認も容易にできます。
さらに過去の設計情報を手本にすることで新人設計者の育成も容易になり、早期戦力化が可能になります。
5.今後へ向けて
今後ますます質の高い設計・設計管理が求められます。そしてこれは単一企業内だけではなく、協業する企業間でも同じ高いレベルの設計・設計管理が求められます。しかし担当者が変わるたびに元に戻るような企業はまだ多いはずです。これではいつまでも強くなれません。設計の都度その経緯を蓄積し、継続的にレベルアップにつなぐべきです。これが強い企業になるための基本原理です。これを習慣付け、レベルアップを図っていきましょう。