コラム

匠が斬る

[Series1:受注設計力の強化]
第2回_商品企画から詳細設計までのプロセスと可視化方法

前回まとめた「設計力強化への期待」を満足するための可視化の手法を紹介していきます。

1.商品企画から詳細設計までのプロセスと設計検討項目

商品企画から仕様、図面、BOM整備までの設計プロセスと設計内容、設計情報は次のようになります。

  1. ①商品諸元の設定:顧客の要望をもとに具体的なモノやサービスのかたち(機能・条件)を顕在化していく。
  2. ②方式開発:上記の機能を実現する技術方式や構造を探索・開発するとともに、設計基準をまとめる。
  3. ③製品企画:量のメリットを得るために固定部と変動部を明確にし、共通化を推進する構成検討を行う。
  4. ④⑤基本設計、詳細設計:方式・構造とその設計計算式や係数を活用して、製品・ユニット・部品の計算値を求め、それをベースに生産・調達性を配慮し、最適なQCDを実現させる製品仕様にまとめあげる。
  5. ⑥ 設計管理:設計のためのE-BOMさらに生産のためのM-BOMへ展開し、各種設計管理へ活用する。

設計をしながらこれらをまとめていくことで、設計情報の可視化ができます。可視化が出来れば何度でも再検討やレビュー、活用、応用が可能になります。また設計の協業も可能になります。

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ここで①商品諸元の設定は、商品企画段階で行うステップです。また②方式開発は要素開発として設計着手の前に検討しておく必要があります。設計着手後にこれをやりだすと、結論が出るまで多くの時間が掛かったり、繰り返しが頻発し、日程遅れの原因になります。設計段階では要素開発で検証された方式の中から取捨選択して採用するようにすべきです。よって要素開発テーマは製品設計側と早目の議論により可能性のある方式を幅広く検討しておく必要があります。このように商品戦略・要素開発・個々の商品開発の三つは相互に独立しかつ、緊密な関係を持ちながら活動する必要があるのです。

当コラムで説明する設計情報の可視化は、①②の情報をインプットとして設計の主体である④基本設計と⑤詳細設計を対象に説明していきます。

2.設計情報の可視化のすすめ方

ここでは理解しやすいように射出成型機への材料投入ホッパーの設計をモデルとして説明を進めていきます。

1)基本設計では、設計の前提条件としての顧客要望機能・条件を明らかにすることから始めます。(下図の左)  ここでは市場の定義と市場毎の要望機能・条件、その根拠を明確にすることが大切です。これをインプットとして基本仕様を検討していきます。(下図の右) ここでは最適な方式・構造の選定、それに沿った最適な基本仕様とその設定根拠を明確にすることが大切です。

この検討履歴を可視化しておき、関係者が確認出来るようにすることで、質の高い商品企画・製品設計の実現ができ、さらに新たな顧客要望時に迅速に対応できるようになります。これが受注設計時に特に有効になります。

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2)詳細設計段階では、上をもとに各部品毎にその設計条件とそれに基づいた計算、さらに購買・生産の条件を 配慮した最適仕様値を設定することになります。この時には設計単位毎の検討経緯を検討手順に沿ってまとめることが大切です。この検討履歴、決定結果を可視化することで、確認・活用が出来るようになります。

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強い設計を実現するためには、このように設計手順にそって、最適な仕様値設定を行う習慣づけを行うことです。 この当たり前の検討を第三者に見えるようにして進めることです。自分のノートにメモとして残していてもその検討履歴は共有されません。これを開示し第三者の目に見せることで質が上がります。またそれが新人設計者の設計の手本となるのです。このような継続的な積み重ねが設計力を確実に向上させます。 次回は、可視化した設計情報をもとに様々な活用をすることでさらにレベルアップを図る方法を紹介していきます。

著者プロフィール

佐々木 伸 氏

ワクコンサルティング株式会社
エグゼクティブコンサルタント

佐々木 伸 氏Sasaki Shin

主なコンサルティング実績

製品コスト低減:自動車、工作・産業機械、プラント、変圧器
工場の生産性向上活動:工具、半導体、機械部品、自動車部品
新規ライン構築:半導体、ロボット部品、電気部品、制御盤
新工場検討活動:輸送機器、工作機械、工具、建築設備
業務改革活動:産業機械、半導体、モータ、光学部品
SCM構築活動:家電、機械ユニット、半導体、楽器
セミナー:レイアウト、在庫管理、設計の可視化、設計生産連携

"公益社団法人 全日本能率連盟主催 論文発表会にて
「設計の可視化による設計マネジメント」経済産業省局長賞受賞
「業務改革コンサルティング技術体系」 全日本能率連盟賞受賞"