コラム

匠が斬る2

[経営管理における今後の視点]
第2回_見える化の積極的な推進

1.見える化の可能性

 製造業において業務改革を掲げている企業は多数あります。その際の重要なアクションの一つが見える化です。これまでも製造業においては、見える化についていろいろな取り組みがされてきました。必要なアクションをするために、選別したデータを収集し必要な加工を行う形で狙い撃ちでの見える化が実施されてきました。 

 しかし近年は、データがあればそこから何らかの新しい関係や法則を見つけ、これまで見えなかったものを見えるようにすることが可能になってきています。このようなビッグデータの収集やAI分析が活用できることも踏まえて次世代の見える化を考えていく時代になってきています。製造業の見える化は、以下のような視点で多くの改善の余地がまだ残されていると考えられます。

  1. ①リアルタイム性向上:生産(物流)の実績・進捗、 設備稼働状況など、バッチで更新していた情報をリアルタイム化するなどの見える化
  2. ②分散している情報の検索容易化:グローバル企業でKPIや原価情報の細部検索が可能になったり、各国ローカル在庫ポイントの状況検索が可能になるなどの見える化
  3. ③関連付された情報の結束:設計開発時の設計変更履歴から、試験結果、製造履歴(含む変更点)、 販売後の製品の使用状況まで製品の生涯を串刺しして見える化

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  1. ④ビッグデータの活用:品質や設備の連続モニタリングによる不具合や設備故障の予測、人の経路や動作の連続分析による無駄取りなど連続データを活用した見える化
  2. ⑤AI解析を活用した解析:不良品の原因の解析と特定、 官能検査の数値化、潜在不具合要因の特定とAIのディープラーニングを活用した見える化
  3. ⑥視聴覚技術を駆使した見える化:画像の拡大縮小及び加工、2次元3次元動画活用、 仮想 (VR)・拡張 (AR)・複合(MR)などを活用した見える化

2.見える化のレベルアップ

 製造現場の見える化といえばアンドンですが、大型表示板での表示やパトライト点灯や音のサインでは人は常に近くにいる必要がありますし、忙しいと見落とすこともあります。近年のICT技術の進化が可能にしたレベルアップの一つが離れたところにいても画像や音を送信し見える化を実現していることです。さらに情報の一方通行だけでなく、見た側からの即時のフィードバックや指示を返すことでスピーディなアクションが取れたり、リモートでコントロールするケースも出てきています。

 二つ目は、まさに見て分かる画像の解析による見える化です。下の図にあるような判断を伴う画像分類、識別能力を生かした物体や領域の検出などが挙げられます。このような画像の分析や画像の加工を応用した見える化は目視検査の自動化など工場においてもいろいろな分野への適用が期待されます。

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 最後は、データマイニングによる見える化です。おむつとビールという関連のなさそうな売上に相関があり、近くに売り場を設置して売上を伸ばしたことで有名な「おむつとビールの法則」のような隠れた関係を見つけたり因果関係を特定したりする可能性は工場においても大きな可能性があります。AIの解析力を生かして過去の膨大な品質のデータベースから製造方法を改善したり、ブラックボックス化された設備の中の不具合の予知を行うことなども見える化のレベルアップと言えるものです。

著者プロフィール

竹内 芳久 氏

ワクコンサルティング株式会社
エグゼクティブコンサルタント

竹内 芳久 氏Takeuchi Yoshihisa

主なコンサルティング実績等

オペレーショナルエクセレンス研究所 代表パートナー
◆コンサルティング分野
ICTを活用したプロセス改善から、企業価値向上視点での生産部門 KPIの設定と活用支援、バリューストリーム視点での改善支援、マネジメント改善及び人材育成の支援など
◆著書その他
・スマート工場のしくみ(日本実業出版)
・マニュファクチャー2030未来の製造業(日経BP)
・講師: 日中協会、大阪府工業会、大学非常勤講師など