~「非構造化データ」の取り込みについて~
IoTの活用に関しては、現在、主に2種類の使い方が一般的です。
一つ目は、カウンターにより、生産数やターンアラウンドタイムを正確に把握し生産計画に対する実際の稼働状態を掌握するもの、二つ目は、センサーにより、製品や装置の計測を行うことにより不良品を排除し、品質管理の精緻なコントロールと自動化を行うというものです。
いずれも、ボトルネックの見える化により、生産性、品質の向上に大きく貢献しますが、残念ながら、それ以上の使い道にはなかなか踏み込めていないケースも散見されます。
今回のコラムでは、データについて注目しながらそのあたりに触れてみます。
改めて、データの種類について触れたいと思います。
IoTの例えばセンサーからのデータはいわゆる非構造化された生データとなっています。
動画・画像、音声、温度、湿度、加速度、などです。
非構造化データとは、項目の形式や順序などについて明確に定義された構造を持たない不定形なデータ集合のことを指します。以前はコンピュータによる内容の自動処理には適さないと言われていました。よくビックデータという言葉を耳にしますが、これは非構造化データを指すものです。
一方、生産計画や在庫調整等の生産管理のデータは、一日の生産量や在庫量などを一義的な数値で表現するエクセルのような構造化されたデータです。構成要素を配列した構造になっています。
IoTがうまく進まないケースは、こうした構造化データと非構造化データがうまく融合できないことが原因だと考えています。いわゆる末端の状態の見える化はIoTによりできているが、それをどのように生産管理に繋げていけばよいのかわからないというケースが散見されています。
さらに、市場に目を向けると顧客情報、競合状況、原材料価格、営業情報等、これも非構造化データとなっており、これを咀嚼し、生産計画につなげることもシームレスにはなっていません。
現場の非構造化データ、生産管理の構造化データ、市場の非構造化データが有機的にかつシームレスにつながることが、これからとても重要になると考えています。
多少難しく申しましたが、実際にある企業からとても実際的な課題を持ち掛けられたことがありましたので紹介いたします。
この企業は乾燥剤として使う消石灰を作られています。消石灰の作り方はとても簡単で山から石灰岩を切り崩し、それを焼くことにより作ります。焼くための燃料には実はあまりこだわりはなく、石油精製の際に生まれる副生成物で安いものなら何でもよいそうです。
そこで、この企業では、燃料タンクの残量を正確に計測し、市場の燃料価格の動向をタイムリーに掌握し、最適な燃料の自動補充を行いたいというものでした。
燃料タンクの残量がIoTの非構造化データ、市場価格動向も非構造化データ、それを構造化した発注システムでつなげるということで、ここでは高感度のセンサーやWebのクローリング技術、AIによる最適化技術が必要となります。
こうしたシステムの要望は大企業だけではなく中小企業でも必要になるケースが多いと思っています。私は近い将来に、こうした個別目的の点と点から線、さらに面になるようなソリューションが求められることと考えています。
データの扱い方にも触れておきます。図を参照してください。
今までの構造化データはデータウェアハウス(Data Warehouse)というルービックキューブのような保管庫に保管し、ビジネスインテグレーションツール(Business Integration Tool)により縦横斜めに分析し結果をフィードバックしています。 それに対し非構造化データを含む情報群はクラウド・エッジ上にデータレークという、あらゆる情報をそのままの形で格納する形態がとられ、その分析をAI(Artificial Intelligence)により行い結果がフィードバックされます。
この2者の違いは、過去・現在の状況をまとめるBIツールに対して、未来を予測するAIということもできます
今後、データの中の8~9割が非構造化データになると言われています。
先進的な企業ではすでに、これらのデータを基に、資材発注、生産計画、納期回答の自動化に取り組まれているところがあります。
非構造化データをうまく活用しながら、膨大な情報を分析・学習し、目的に寄与する因子の抽出や事象のモデル化、将来予測を行い、最終的には、蓄積した知見やノウハウ、構築したモデルによる将来予測を基に、自律的に最適な判断・実行を可能とする生産形態を構築していただければと考えます。
次回は、データ制御による自律的最適化によって成しえる、将来のスマートファクトリーの姿について触れてみたいと思います。