~整合が取れ、互いに連携の取れた社内システム構築へ~
前回の「はじめに」に記載したとおり、個別受注生産においては、より詳細な注文要件に応じながら、小ロットでの取引にて迅速かつ確実に収益を上げることが求められています。そのため社内のあらゆるシステムを互いに連携させながらより精緻に管理することが必要になってきています。
DXを推進する上での最も重要な入口として、私は、整合がとれ、互いに連携のとれた業務プロセスの構築と運用が何より重要だと考えています。
中小企業での社内システム開発において、よく目にする光景は自社の業務に合わせた目的別のシステムを懇意にしているSEベンダーさんに作ってもらっているケースですが、各々のシステムが連携していないために、結局、社員の方々につなぎあわせるための多くの手作業が発生している場合があります。複雑になると輻輳したデータの取り扱いが発生し、帳尻を合わせるためのすり合わせに膨大な労力を費やしています。
まったくの余談になりますが、日本の行政のデジタル化が遅れてしまっている原因はここにあり、行政の現場では調整のために大変なご苦労をしていることを垣間見ています。
少し細かくなりますが、実際の事例を見てみましょう。
個人の4情報(氏名、性別、生年月日、住所)といった基本的な情報は、住民票コード、マイナンバーコード、住民基本台帳、免許証、健康保険証の中で各々独立して管理され、行政担当者はその間の食い違いの整合を取るために膨大な工数をかけて対応しています。日本の名前や住所には外字(特殊な漢字)が使われており、住民票コードでは正しく表記されているがマイナンバーコードでは一義に対応できないためマイナンバーカード発行の際、行政担当者が一件一件、外字登録し直しているということが行われています。最近ではワクチン記録システム(VRS)も同じ4情報が使われていますね。これはすでに役目を終えつつある住民基本台帳をベースに作られています。目的別に同じ情報を輻輳して準備すること自体が誤りで、これらは当然一つの基本となるデータから派生させていくことが健全です。例えばマイナンバーコードを基にして健康保険証の住所を対応づければマイナンバーカードによる健康保険証の置き換えもスムーズにいくし、ワクチン接種券番号での予約やワクチンパスポートもマイナンバーコードで置き換えがきくはずです。
ちなみにマイナンバーカードの普及は中々進みませんが、マイナンバー自体に関しては、すでにすべての国民と在留外国人に12桁の数字が付与されておりカードの有無にかかわらず利用可能です。
結局、データリテラシー(データ情報を把握し正しく使用できる能力)が低いのだと思います。
行政のデジタル化の問題点を悪い事例として紹介しましたが、製造業の各企業でも同じような間接業務は発生していないでしょうか?
整合が取れ、互いに連携の取れた業務プロセスとそれに基づくデータのやり取りをまずはしっかりデザインし、それからデジタル化を考えることがとても重要です。
個別受注生産において、私は、こうした基本情報の根幹をなすものが階層型の製番であり、すでに精緻に構築された製番システムとそこから派生させた生産管理をはじめとする様々なシステムを活用することが近道であると思っています。
自社の特定の業務目的に対応するシステムを、個別最適で作ろうとすると最終的にデータが輻輳しムダが生じるかもしれません。階層型の製番を基としながら各システムの派生データをAPI(Application Programming Interface)化し、つなぎ方を変えることにより様々な用途に応じたデータの見える化を果たすことが出来ます。
自社内で一度、先に述べた行政問題のようなことが起こっていないか、確認してみてはいかがでしょうか?
参考として:製造業におけるシステムや業務をいくつか書き出してみました
顧客管理システム(Sales Force Automation, Customer Relationship Management)
電子商取引(Electronics Commerce)
生産計画最適化システム(Advance Planning and Scheduling System)
工程管理・製造実施ステム(Manufacturing Execution System)
資材所要量計算(Material Requirements Planning)
物流計画システム(Distribution Requirements Planning)
そしてそれらを統合して運用する
統合基幹業務システム(Enterprise Resource Planning)
開発系においては
製品データ管理システム(Product Data Management) や CAD(Computer Aided Design)など
さらに管理会計を含む会計システム等の経営管理システムなど、こうしたシステムの最も根幹のデータとして階層型の製番を置くことが出来ればよいと考えています。
次回は、IoTセンサーから得られた「生データ」や市場や顧客からクローリングされた「生データ」などのいわゆる「非構造化されたデータ」の取り扱いについて考えてみたいと思います。