コラム

匠が斬る2

[生産技術から見たDX-2]
第2回_作業管理におけるDXオポチュニティ

1.作業手順の提示

 多品種少量生産や受注生産では、製品の種類に比例して作業手順も多種類となるため、その管理を適切に行い正しく提示することは製造における重要な要素です。しかしまだまだ主力は帳票で、こまめに行う必要のある最新版へのタイムリーな更新、視覚に訴える分かりやすさという点では大きな改善余地があります。

 もうすでに多くの事例があるのは、ディスプレイを現場に整備しておいてそこに電子ファイル化された作業手順を映し出す方法です。多少の投資を要しますが、これだけでも紙ファイルの管理をなくしたり、ラベル読み込みによりタイムリーに表示できるなどの効果はでてきます。拡大や縮小、マーキング機能を活用することで見やすさも向上します。さらに帳票が電子化されているため追加・修正といった作業は大幅に楽になってきています。

 もう一つの取り組みは動画を使った作業手順の教育です。通常の作業手順書では作業手順そのものに加えて、作業の急所を記述したり図表を使って分かりやすく補足したりされていきます。これを帳票にまとめて記述していくにはノウハウがいるので、作成した人により巧拙の差がでたりしますが、このような問題を改善する有効な手段が動画です。逆に動画そのものを上手く撮り編集するという別のノウハウが必要にもなりますが、動画で見せることができる圧倒的な情報は作業者教育には有効です。

 上記2つをさらに有効活用する方法として、帳票の中に必要なポイントを見せる部分動画を埋め込んでおくような方法も有効であり推奨できます。使い勝手も一層よくなりますし、保存や改訂を行う際にも楽になります。だだしこのような場合でも作業そのものに変更が生じた場合には、速やかに改訂しなければならないというところは変わりません。

 

 

 

2.作業実績収集

 生産実績収集が、どんどん効率化されつつあることは先に述べましたが 一方作業管理においても実績収集についても効率化の余地は大きく残されています。多品種少量生産では、一人の作業者が多くの作業をこなし、設備も多くの種類を分担し生産します。作業時間の実績収集は、作業者毎に生産した時間を部品や製品別に紐づけて時間を記録するか、設備毎に設置した記録表に作業時間を残しておくなどが主流ですが、どちらもメモや台帳に記録していくという手間のかかるプロセスがたくさん残っています。

 このような課題に対して、エリアセンサー、足踏マットスイッチなどを使って作業域への出入りで時間を取ったり、センサー付きのウエアで経路や動作から自動で作業と時間を識別させるなど、いろいろな試行錯誤がなされています。設備側から時間を取る際には、オンオフ時間からリンクさせたり、作業開始終了時に作業者IDを読み込むなど各種の研究がされています。

 いずれにしても、IoTとその機器を有効に選択したり組み合わせるなどの小さな改善を積み重ねて入力作業の精神的負担を含めた総合的入力負担の軽減を行い、入力精度、リアルタイム性、入力効率を上げていくことが重要です。

 

3.標準作業時間の設定

 作業管理のベースは標準作業時間ですが、設定には熟練も必要であり設定に工数もかかります。従って新製品立上げ時などイベント時に設定し、年1回程度改訂するか毎年それに掛合わせる係数を減じていくような形で運営することも多いようです。しかし、一方で標準作業時間は、ムダの削減を進めるツールという側面を持ちます。細かい単位ごとに作業時間を整理しておいて動作改善の余地を見出したり、実績時間と突き合せて無駄を見つけて改善を進めることができます。さらに適正な標準作業時間や設備のサイクルタイムがあれば、配員やラインバランシングを検討する場合や複数の設備の掛け持ちを検討する場合に有効活用が期待されます。

 このような改善ツールとしての側面を強めるためには、標準時間の設定用に動画を撮影し活用することも有効です。その画像を基に自在に分割して細かい作業単位で時間をとれるようなソフトウエアもあるので、活用することも有効な方法です。

 いずれにしても、この作業管理分野のDX化は、今後の進展が期待される分野です。

著者プロフィール

竹内 芳久 氏

ワクコンサルティング株式会社
エグゼクティブコンサルタント

竹内 芳久 氏Takeuchi Yoshihisa

主なコンサルティング実績等

オペレーショナルエクセレンス研究所 代表パートナー
◆コンサルティング分野
ICTを活用したプロセス改善から、企業価値向上視点での生産部門 KPIの設定と活用支援、バリューストリーム視点での改善支援、マネジメント改善及び人材育成の支援など
◆著書その他
・スマート工場のしくみ(日本実業出版)
・マニュファクチャー2030未来の製造業(日経BP)
・講師: 日中協会、大阪府工業会、大学非常勤講師など