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経験者が語るIT部門運営の秘訣

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【第11回】経営視点で捉えるデジタル化とIT投資のポイント
【前半】人財投資についての提言

1.はじめに

生成AIの登場で業務の効率化が加速し、「人」を煩雑な業務から解放できる時代になってきています。例えば、議事録の作成、文書の要約、必要な情報の提供、プログラミング、イラストの作成など様々な用途で活用されています。

 

しかしAIはツールであり、活用し効果を出していくのは「人(ヒト)」です。

デジタル化推進においても同様の事が言えます。品質が高く、機能が充実したシステムを構築して運用し、効果を出していくにはやはり「人(ヒト)」が鍵を握り、必要な人材が適切なタイミングで的確かつ適切に対応しなければ、成果を出すことは難しくなります。

今回のコラムは前半、後半の2回に分け、デジタル化投資、特に人財投資の重要性とデジタル化推進における経営の役割などについて考察します。

2.デジタル化の問題点

読者の皆様にお尋ねします。経営層や組織幹部の方で以下のような出来事を体験された、耳にされたことはないでしょうか。

①情報システム部門からシステム刷新の相談はあるが、システム老朽化対策が目的で費用対効果が出ておらず再考を指示した

②新基幹業務システムは稼働したが、現場運用が定着していない、あるいは現場で不満が多く出ている

③見える化・可視化と言いながら、欲しいデータが出ない「運用のルールが明確ではない」「必要なデータが揃わない」などの理由で思うような期待効果が出ない

④基本設計完了後に、アドオン・カスタマイズ費が膨らみ、コスト増の相談があった

 

次に、情報システム部門やデジタル化プロジェクト推進者において下記のような内容を体験された、耳にされたことはないでしょうか。

⑤システム更改プロジェクトの要件定義、機能設計において現行システムに近い要望が多発して開発コストが高騰した

⑥業務のトレードオフ問題が該当部門の工数消化の問題で解決しない

⑦システム更改プロジェクトで合意した新業務プロセスや新機能について、総合運転試験、運用・操作教育の時点で機能追加・見直し要求が発生し、対応には追加コストが発生した

⑧総合運転試験において多忙を理由に現場部門が十分に参加できずに、十分な事前運用検証が未消化で本番スタートとなり、現場の混乱と対応に労力とコストが必要となった

⑨システム稼働後に利用部門から機能不足の指摘や、業務運用の見直しの要望が出て追加コストが発生した

 

前記の事象について、いずれか一つでもお心当たりがあるのではないでしょうか。

本稿では、その原因について考えていきたいと思います。

3.原因の分析と考察

前記に続き、別の角度から下記の内容についてお尋ねします。

①なぜ何のためにデジタル化を行うのか。

つまり、目的は情報システム構築ではなく、業務改革・変革であることを発信しているか?

②プロジェクトには業務を議論し組み立てられる人がアサインされているか?

③業務プロセス再構築に併せて適切な組織(機能、要員数、スキル配置)見直しが行われているか?

④部門間の課題検討はあるべき像の議論として担当役員や幹部が関与しているか?

⑤デジタル化を理由に情報システム部門に任せきりになっていないか?

⑥新たな仕組みに必要なデータを現場部門が対応しているか?

⑦マスター整備、データ整備をIT部門に丸投げになっていないか?

 

これらはデジタル化についての経営からのメッセージと目標の共有、プロジェクト成功に向けた人財投資、経営および現場部門の関与が、適時・適切に行われているかどうかという観点です。欠けている項目があればそれが2.デジタル化の問題点の①~⑨項目の発生の要因に繋がっていると考えます。

4.原因の考察と対策の検討

まず、経営ミッションについては以下の2つの要素があると考えます。

(1)理念、方針、ビジネスゴール・プランの立案と実行

やりたい事の明示と実行

(2)経営リソース配分について

やりたい事を実現するためのリソース(モノ/カネ/ヒト)の投資

 

デジタル化について当てはめて考えると(1)なぜ、何のためにデジタル化を行い、何を解決するのか?(2)デジタル化に対してITツールへの「モノ」「カネ」投資だけでなく、それらを実行するための人財の投資「ヒト」も並行して必要です。

 

前記のような事象が発生する原因を考えていくと、適材適所や、適切かつ適時・的確な「ヒト」のリソース投入の問題であると考えられます。

その為には経営の積極的関与が最も重要であると考えます。加えてデジタル化に必要な「ヒト」への投資を行い、適材を適切なタイミング、かつ的確にアサイン・投入していくことが求められます。さらに、平常時から必要な「ヒト」の確保、教育、育成に取り組み、適材の養成を実施することが大事だと考えます。

 

モノ・ヒト・カネ投資をまとめると以下の通りです。

a.モノの投資(カネ:設備・経費)

・必要な業務システム、セキュリティ、ネットワーク、パソコン、サーバ

・クラウドなど設備投資、経費投資(保守、使用料など)

b.ヒトの投資(カネ:人件費、役務費)

・該当プロジェクトへの経営層、幹部の具体的参画

・該当プロジェクトへの適切適時適材を的確にアサイン

・組織整備/配置換え

・採用、教育、育成など人財養成についての投資

5.デジタル化に必要な「ヒト」とは

デジタル化推進において様々な角度で人財が必要です。

必要なヒト 該当組織例
デジタル化による事業変革を行うヒト

役員、幹部、事業企画、経営企画

デジタル化による業務変革を行うヒト

役員、幹部、業務企画、現場部門、IT戦略/企画部門

デジタル化を経営と共に企画立案するヒト

CIO、IT企画部門

デジタル化を具現化するヒト

CIO、情報システム部門

目的システムを運用し効果を生み出すヒト

現場部門/利用者

更に下記の事項も重要です。

・変革後のビジネスモデル、業務プロセスに最適な組織化

・業務プロセス変革⇒組織機能が変わる(職務分掌)

・つまり要員の役割が変わるため最適な要員配置の見直しが必要

6.「ヒト」の投資についての問題点整理

ここで、今までお話した内容において問題点を整理すると下記の内容になります。

問題点 概要
1.経営の参画度が低い

経営による目的の明確化や該当プロジェクトへの参画度が低いとデジタル化は進んでも、人への投資が適切になされないため(人の質・量が伴わないと)目標が達しない

2.従業員に対する意識変革、目的の浸透が弱い

何のためのデジタル化であるか?意識変革不足や浸透が弱いと要件定義・機能設計において、「レガシーシステム機能に先祖返り」「期待効果でない、目的未達」、「開発費高騰」の現象が生じる。また稼働後に問題が多発して混乱が発生したりして結果的に目標に達しない

3.全体最適思考の落とし穴

全体最適思考でデジタル化を進める際に適切な組織機能見直しや要員配置(質・量)が行われないと以下の問題が残る
・部門間のトレードオフ問題が解消しない
・部署により運用工数増が発生する

4.利用部門のITリテラシーが低い

現場利用部門のITリテラシーが低いと、システムを使いこなせない、データ活用が進まないなどの現象が発生し目標を達しない(期待効果でない)

7.「ヒト」の投資の問題点に対するまとめ

デジタル化を成功に導くための経営側として「ヒト」投資について必要な事項をまとめると以下の内容になります。

  1. なぜ何のためのデジタル化/システム化であるかの発信と浸透
  2. 業務改革・変革の必要性に対する意識変革/啓発
  3. 業務プロセス変革に適切な組織変革を実施
  4. 必要リソースの配分・投入(ヒト、モノ、カネ)
  5. ヒト投資、つまりデジタル化に対して適材適所のアサイン、目標共有、教育、育成
  6. ITリテラシー向上に向けての啓発・教育の実施

8.最後に

今回の前半では、デジタル化について「ヒト」投資の重要性についてお話しました。次回後半は、デジタル化推進における経営の関与の必要性についてお話したいと思います。

ご参考になれば幸いです。

著者プロフィール

オフィスJOE

小林 譲 氏

【経歴】

  • 1980年 富士通株式会社入社
  • 1985年 大日本スクリーン製造株式会社入社(現在の株式会社SCREENホールディングス)
  • 2009年 同、情報システムグループ グループ長
  • 2014年 SCREENホールディングス IT企画室長
  • 2015年 SCREENシステムサービス 代表取締役社長
  • 2019年 同、会長
  • 2020年 同、顧問(非常勤)
  • 2021年 同、顧問退任
    現 特定非営利活動法人 CIO Lounge 理事

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